猫の血栓症は長生きできる?肥大型心筋症から起こるメカニズムを解説! - 大阪梅田ペットクリニック

コラム

猫の血栓症は長生きできる?肥大型心筋症から起こるメカニズムを解説!

「血栓症」という病気をご存じでしょうか?

血栓症は人間にも起こり得る命をも左右する重大な病気です。

あらゆる要因で発症することのある病気ですが、今回は肥大型心筋症によって発症する可能性について解説していきます。

また、猫に多いとされている肥大型心筋症についても詳しく解説していきます。

猫の肥大型心筋症とは?

「心筋症」はいくつかのグループに分類されています。

その中でも肥大型心筋症は、猫の心臓病に最も多くみられる病気と言われています。「心筋」は、心臓の機能を果たすための大きな役割を担っている筋肉です。

心筋が収縮と拡張を繰り返すことで、全身に血液を循環させることができます。

その心筋の壁が厚くなり肥厚してしまうと、心臓の内腔が狭くなり、十分な血液量を送り出すことができなくなります。また、柔軟性も低下してしまうため、心臓の動きを妨げることにもつながります。

肥大型心筋症は、血液を送り出す左心室の心筋が肥厚するのが特徴です。

発症率は、15%前後と言われており、猫がかかることが多いとされている病気の中でも上位にあたります。

肥大型心筋症の怖いところは、無症状で進行する場合があることです。

末期まで症状がなく、最期を迎えてしまうケースも少なくないそうです。

また、有効的な予防法や完治療法は現在のところ見つかっていません。

参照元:猫の肥大型心筋症 | 症状・原因・治療・予防法などを循環器認定医獣医師が解説 | ペトコト(PETOKOTO)

かかりやすい品種

肥大型心筋症になりやすいと言われている猫種は、以下のとおりです。

・メインクーン

・ラグドール

・ノルウェージャンフォレスト

・アメリカンショートヘア

・ブリティッシュショートヘア

そのほかにも短毛雑種猫にも多いとされており、約40%の短毛雑種猫に肥大型心筋症が見られるという結果もあります。

これらの猫種だけが発症するとは一概に言えず、それ以外の猫種でも発症する可能性はあります。

発症する年齢

一般的には、5〜7歳に好発すると言われており、高齢になるにしたがって発症率は上昇傾向にあります。

ある調査結果では、3〜9歳に約19%、9歳以上では約29%の猫が罹患しているという報告もあります。

猫が肥大型心筋症になる原因は?

肥大型心筋症になった猫には、遺伝子の変異があることが確認されています。そのことから、何らかの遺伝的な要因が肥大型心筋症になる原因ではないかと考えられているのです。

また、高血圧症や甲状腺機能亢進症などの病気が肥大型心筋症を引き起こす原因になるとも言われています。

肥大型心筋症の症状は?

肥大型心筋症では、最期まで症状がない場合も多くあります。

また、聴診器でも発見することが難しく、明らかな症状が出てから見つかる場合もあるそうです。

早期発見することで、症状の緩和や対処が期待できるでしょう。

しかし、猫たちは、人間と違って異変を訴えることができません。

では、早期発見するためにはどのような異変に気を付ければいいのでしょうか。

注意すべきいくつかの症状をご紹介します。

呼吸困難になる

一番に気を付けるべきは呼吸状態です。

4つの注意すべき異常な呼吸は以下のとおりです。

呼吸特徴
頻呼吸1分間に30回以上の呼吸。
鼻翼呼吸小鼻が膨らむような呼吸。安静時にも鼻がヒクヒクしているような呼吸は要注意。
開口呼吸口を開けて呼吸している様子。
努力呼吸胸やお腹がいつもより大きく動く呼吸。

呼吸の異常は命に直結する重要なサインです。

肺水腫や胸水の貯留によって上手く呼吸ができないことで異常な呼吸として症状が現れている可能性があります。

普段より少しでも異常を感じたら、専門家に相談しましょう。

食欲がなくなる

食欲がなくなる異変にはさまざまな原因があります。

肥大型心筋症の場合にも食欲の低下は、よくある症状です。

その猫の気分やワガママの可能性もありますが、初期症状として見られることもあるので安易に考えないようにしましょう。

体重が減少する

食欲がなくなるのと同時に体重減少も見られます。

体毛によって一見、体重減少は分かりづらい所見ですが体力の低下の原因にもなります。

さらに、免疫力や活動量の低下につながることも。

そのほかの病気の併発にも関わってくるため、安易に考えてはいけません。

血栓症になる

血栓症は、命を左右する重大な病気です。

肥大型心筋症が進行すると、心臓内に貯留した血液が固まり、血栓を形成します。それが血流にのって全身に巡ると肺や腎臓などの細い血管が集中している所に詰まり塞栓を引き起こします。

そして、塞栓された血管は血流が滞り、あらゆる機能不全を引き起こすのです。

肥大型心筋症から血栓症になるメカニズム

肥大型心筋症を発症すると、左心室内の内腔が狭まることで大動脈への血流量が制限されたり血液の逆流の可能性があります。進行すると、うっ血性心不全に陥ることも。

うっ血性心不全を発症すると、心臓内に送り出されるべき血液が貯留し肺水腫や胸水の貯留などの合併症もあり、特に猫は胸水の貯留が起こりやすいとされています。

心臓内に貯留した血液は、塊を形成し血栓となり大動脈を通じて全身へ流れる可能性があります。この血栓が血管に詰まる(血栓塞栓症)と急激な状態悪化の引き金になり得ます。

血栓症の症状は?

血栓症は、心不全が進行し重度や末期の場合に突如症状が現れます。

発症した猫の約70%が大動脈と腸骨動脈の分岐部で発症していると言われています。

腸骨動脈は骨盤付近にある下肢へ血流を送る動脈です。

ここに血栓塞栓症が起こることで、後肢や尾への血流が途絶えます。

その結果どのような症状が現れるのか詳しく解説します。

参照元:猫の動脈血栓塞栓症(FATE)~症状・原因から予防・治療法まで猫の血液の病気を知る | 子猫のへや (konekono-heya.com)

後肢痛

後肢につながる動脈で血栓塞栓症を引き起こすと、突如激しい痛みを伴います。

普段から近くにいる場合なら、その変化に気づきやすいでしょう。

後肢痛が起こると同時に後肢麻痺も見られます。

後肢麻痺

血栓塞栓症によって引き起こされる症状は、後肢痛に加え、体温低下や神経症状として生じる後肢麻痺です。

後肢麻痺は、立てなくなったり肉球の色が青白く冷たくなったりなどの異変が見られます。

麻痺が続くと、壊死やその他の機能不全を引き起こす可能性もあります。

軽度の場合では、フラフラとしていることや動きが鈍くなったなども症状として考えられます。

いずれにしても後肢に異変が見られる場合は、早期に獣医に相談しましょう。

猫が血栓症になると長生きできない?

血栓症は、どこで塞栓を起こすか予測がつかず、命を左右するものです。

血栓症を発症した猫の死亡率は約70%と高く、早期に対処しても再発のリスクも約50%です。

投薬によって軽快したとしても予後は良いとは言えないでしょう。

既に体温低下や麻痺、呼吸困難を引き起こしている場合では、より生存率が低くなります。

しかし、早期対応によって血栓の融解や血流の改善が期待できる場合もあります。

軽快後も油断はできませんが、飼い主の献身的な管理が再発予防や予後を大きく左右することでしょう。

猫の血栓症でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!

肥大型心筋症は、猫の心臓病で最も多く発症する病気です。血栓症や肺水腫など合併症も併発する可能性もあります。予防策は確立されていませんが、日々の様子を観察することで早期に対処し軽快することが可能です。小さな変化を見逃さないことで、大切な家族と共に素敵な時間を過ごしましょう。

現在、肥大型心筋症や血栓症などでお困りの方は、大阪梅田ペットクリニックへぜひご相談ください。