猫が肥大型心筋症を発症した場合の余命は?治療方法・飼い主ができること
肥大型心筋症は、猫の心臓病の中でも特に注意が必要な病気のひとつです。肥大型心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)が厚くなってしまうことで、心臓の働きが弱くなってしまう病気です。
特に左心室の筋肉が厚くなることが多く、心臓が十分に広がらなくなって、全身にうまく血液を送り出せなくなるのです。この病気は初期には症状が出にくいため、気付いた時には進行してしまっているケースもよくあります。進行すると、うっ血性心不全や動脈血栓塞栓症を発症することも。普段の様子をよく観察して、小さな異変にも気付いてあげることが早期発見につながります。
この記事では、猫の肥大型心筋症の症状や治療方法、余命などについて詳しくご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
猫の肥大型心筋症の症状は?
猫の肥大型心筋症は、初期のうちはほとんど症状が出ないこともあります。しかし、病気が進むにつれて、呼吸が速くなったり、疲れやすくなったりとなどの症状が少しずつ現れてきます。まずは、猫の肥大型心筋症の症状について詳しくご紹介します。
呼吸困難
猫の肥大型心筋症では、心臓の働きが低下することで肺に水がたまり、呼吸が苦しくなってしまう肺水腫や胸水などの状態に進行することがあります。これにより、猫は浅く速い呼吸をしたり、時には口を開けてハアハアと息をするようになります。
静かに鼻呼吸をしている猫が、このように苦しそうな様子を見せるのはとても珍しいことで、重い症状のサインと捉えてください。また、胸を大きく動かして呼吸するような姿や、動くことを嫌がりじっとしているような様子も見られる場合があります。呼吸がいつもと違っていたり、呼吸が早くなっていると感じたら、すぐに動物病院に相談してください。
疲れやすくなる
肥大型心筋症の猫は、心臓の機能が落ちることで全身に十分な血液を送れなくなり、体力が低下してしまいます。そのため、いつもはよく動き回っていた猫が、突然動かなくなったり、ジャンプをためらったりすることがあります。
家の中のお気に入りの高い場所に登らなくなった、遊びたがらなくなった、などといった小さな変化も、体が疲れやすくなっているサインかもしれません。
このような場合は「なんとなく元気がない」という軽い判断をするのではなく、病気の可能性を考えましょう。毎日の行動をよく観察することで、早期発見につながります。
食欲が落ちる
猫の肥大型心筋症では、体のだるさや呼吸の苦しさから、食欲が落ちることがあります。心臓の働きが弱くなることで内臓への血流も低下し、食欲不振や消化機能の低下につながる場合もあります。
また、実際に猫が食事をとらなくなることもあります。特に、食べ物の好みが急に変わったり、大好きだったおやつにも興味を示さなくなったりした場合は注意が必要です。食欲がない日が数日間続いてしまうと、脱水や体力低下を招くおそれもあるため、猫がエサに対して興味を示さなくなった場合は念のため病院で診てもらいましょう。
猫の肥大型心筋症の治療方法は?
猫の肥大型心筋症には、残念ながら完治を目指す治療法は現在のところありません。でも、だからといってすぐに悲観する必要はありません。
今の医療では、病気の進行をゆるやかにし、心臓への負担をやわらげる薬を使った治療が行われています。猫の体調や心臓の状態に合わせて薬の種類や量を調整しながら、できるだけ穏やかに、元気に暮らせる時間をのばしていくことが目標です。
なかには、治療によって以前よりも活動的になったり、キャットタワーに登るほど元気を取り戻す子もいます。
現状では治療法はなくても、寿命を伸ばすことで猫の人生を支えてあげることが大切です。
猫の肥大型心筋症が進行するとどうなる?
肥大型心筋症が進行すると、心臓の働きがさらに弱まり、体にさまざまな不調が現れます。たとえば、呼吸が苦しくなる「うっ血性心不全」や、血のかたまりが詰まる「動脈血栓塞栓症」などが起こることも。どちらも命に関わる状態なので、早期発見と治療がとても重要です。具体的にどのような症状に進行するのかについて詳しく解説します。
うっ血性心不全
猫の肥大型心筋症が進行すると、「うっ血性心不全」という状態になることがあります。これは、心臓のポンプの力が弱くなってしまい、全身に十分な血液を送り出せなくなることで起こる病気です。
その結果、送りきれなかった血液が体に滞ってしまい、うっ血と呼ばれる状態になります。その結果、血液中の液体成分が肺や胸の中に溜まり、肺水腫や胸水という状態になり、猫は息をするのが苦しくなります。普段なら静かにしている猫が、胸を大きく動かして呼吸したり、口を開けて苦しそうにしていたら、早めに病院へ連れて行きましょう。うっ血性心不全は見逃すと命にかかわることもあるため、小さな変化にも気付いてあげることが大切です。
動脈血栓塞栓症
肥大型心筋症が進行すると、心臓の中の血液の流れが滞りやすくなり、その影響で血栓(血のかたまり)ができることがあります。この血栓が動脈をふさいでしまうのが「動脈血栓塞栓症」です。特に多くみられるのが、後ろ足への血流が突然止まるケースで、猫が急に「キャッ」と鳴いて倒れ込んだり、後ろ足をひきずったり、冷たくなった肉球の色が白っぽく変わったりすることもあります。
触ると冷たく、まるでしびれているように力が入らない様子が見られます。これはとても緊急性の高い症状で、早急な処置が必要です。治療が遅れると、血の巡りが戻らず足の組織が壊死してしまうこともあります。普段元気な猫でも突然発症することがあるため、注意してください。
猫が肥大型心筋症を発症した場合の余命はどれくらい?
肥大型心筋症は、猫の心臓病の中でも比較的多く見られる病気です。先にご紹介したように、この病気は完治が難しく、発見された時点ですでに進行していることもあります。
発症からの余命は数ヶ月~数年と個体差が大きく、心臓の状態や治療のタイミングによって大きく変わります。早期に見つかって適切な治療ができれば、穏やかに過ごせる時間を延ばすことは可能です。そのため、発症したからといって余命が決まるわけではありません。
猫の肥大型心筋症を早期発見するために飼い主ができることは?
肥大型心筋症は、猫の体に大きな負担をかける病気ですが、飼い主さんが早期発見をすることで発症を抑えることができます。
まず大切なのは、毎日の様子をよく観察することです。呼吸のスピードや、疲れやすくなっていないか、食欲が落ちていないかなど、小さな変化を見逃さないようにしましょう。
また、特に中高齢の猫や心臓病のリスクがある猫種は、年に一度は心臓の検査を含む健康診断を受けるのがおすすめです。早期に見つけて適切な治療を始めることで、健康でいられる時間を過ごすことができます。
猫の肥大型心筋症でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!
この記事では、猫の肥大型心筋症の症状や治療方法、余命などについて詳しくご紹介しました。猫の肥大型心筋症は、見た目にはわかりにくい病気ですが、進行すると命に関わる深刻な症状を引き起こすことがあります。呼吸の変化や疲れやすさ、食欲の低下などの小さなサインを見逃さないようにしましょう。
完治は難しい病気ですが、治療とケアによって穏やかに過ごすことは可能です。定期的に健康診断を受けて、猫の健康を守っていきましょう。
もし現在、猫の肥大型心筋症でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください。大切な猫ちゃんの健康を一緒に守っていきましょう。