猫に胸水が溜まる原因は?検査方法・取り除く方法などを解説!
猫の胸に水が溜まる「胸水」が起こることがあります。原因はさまざまで、心不全や炎症、腫瘍などが考えられます。この記事では、猫に胸水が溜まる原因や検査方法、改善方法などについて詳しく解説します。
目次
猫に胸水が溜まる原因は?
猫の胸に水が溜まる胸水という現象は、呼吸が苦しくなる原因のひとつです。原因はさまざまで、心臓の病気や腫瘍、感染症などが関係しています。ここでは、猫の胸水の主な原因について詳しく解説します。
心不全
心臓の働きが弱まると、血液がスムーズに流れなくなり、血管の中の圧力が高まります。そうなってしまうと、血液の水分が漏れ出して胸水が溜まることがあります。高齢の猫や、心臓に問題を抱えやすい品種の猫は、特に心不全が原因となることが多いといわれています。
心不全による胸水は、息苦しさや疲れやすさが見られることがあり、治療には心臓の機能を助ける薬の投与や、胸水を抜く処置が一般的です。
炎症・感染
体の中で炎症が起こると、血管の壁がダメージを受け、水分が漏れ出しやすくなります。胸膜炎や肺炎などの感染症が原因となることが多く、細菌やウイルス、真菌(カビ)などが関与している場合も。炎症が原因の胸水は、膿のような濁った液体になることがあり、発熱や食欲不振が見られることがあります。治療には抗生物質などの薬を使って感染を抑えるとともに、必要に応じて胸水を抜く処置が行われます。
腫瘍
猫にできる腫瘍の中には、胸水を引き起こすものがあります。リンパ腫や胸腺腫といった腫瘍が原因となることが一般的です。リンパ腫は、猫に多く見られるがんの一種で、リンパ系の細胞が異常に増殖する病気です。一方で胸腺腫は、胸腺という臓器に発生し、重症筋無力症と呼ばれる筋力が低下する病気を引き起こすこともあります。腫瘍が原因の胸水は、進行すると呼吸が苦しくなるため、胸水を抜く処置が必要になることがほとんどです。
低アルブミン血症
アルブミンは血液中のたんぱく質で、血管の中に水分を保つ働きを持っています。何らかの理由でアルブミンの量が低下すると、血管から水分が漏れ出しやすくなり、胸水や腹水が溜まる原因となります。低アルブミン血症は、慢性的な肝臓病や腎臓病、消化器疾患によって引き起こされることが多く、病気の治療とともに栄養管理が重要です。低アルブミン血症が疑われる場合は、血液検査などで詳しく調べ、原因を特定していきます。
出血
胸腔内で出血が起こると、血液が溜まってしまうことがあります。この状態を血胸(けっきょう)と呼びます。出血の原因には、胸の中にできた腫瘍、肺や心臓の病気、感染症、外傷などが考えられます。また、手術や医療処置が原因で起こることも。血胸が進行すると、貧血を引き起こしたり、呼吸が苦しくなったりするため、早急な治療が必要です。
猫の胸水の検査方法は?
猫に胸水が溜まっても見た目だけでは判断が難しいことが多いため、詳しい検査が必要になります。具体的な検査方法についてご紹介します。
一般身体検査
胸水が溜まると、猫の呼吸が苦しくなることがあります。そのため、診察ではまず呼吸の様子をチェックします。胸に水が溜まっていると、十分に空気を取り込めなくなるため、息をするのが辛そうに見えたり、舌や粘膜が青っぽくなるチアノーゼという症状が現れたりすることもあります。また、聴診器を使って心臓や肺の音を聞くことで、胸水の存在を推測することができます。心臓の音が左右で違って聞こえたり、肺の音が弱くなっていたりする場合は、胸水の可能性を考えます。この検査だけでは胸水が溜まっていると確定はできませんが、次の検査を行うために必要になります。
胸部X線検査
レントゲン(X線)検査は、胸の中の状態を確認するために行う検査です。胸水の量によって、画像の見え方が違います。軽度の胸水であれば、肺の周囲にうっすらと線状の影が見えることがありますが、ごく少量の場合は異常がはっきりと映らないことも。中程度の胸水になると、肺が水によって圧迫されて縮んでしまい、本来あるべき場所から少し離れたように見えることがあります。そして、多量の胸水が溜まると、X線画像全体が白くなり、心臓や横隔膜の輪郭が見えなくなることもあります。
超音波検査
超音波検査(エコー検査)は、X線では映らない少量の胸水を検出するために行われます。胸水が多く溜まっている場合は、肺や縦隔(心臓や大血管がある部分)が浮いて見えることがあります。また、超音波検査は胸水の原因を詳しく調べるのにも重要です。例えば、前縦隔にできた腫瘍や心臓の異常、肺のねじれなどが見つかることがあります。負担が少なく、リアルタイムで体の内部を確認できるため、非常に重要な検査方法です。
猫に溜まった胸水を取り除く方法は?
猫の胸水は、放置すると呼吸困難を引き起こすことがあるため、処置が必要です。ここからは猫に溜まった胸水を取り除く方法について詳しく解説します。
胸水抜去
胸に溜まった水によって呼吸がしづらくなっている場合、まずは胸水抜去と呼ばれる処置を行います。細い針やカテーテルを使って胸水を抜き、肺を広げやすくする方法です。胸水が減ることで呼吸がしやすくなり、猫の状態が改善することがほとんどです。ただし、この処置はあくまで一時的な対策で、胸水が溜まる原因を取り除かない限りは再び胸水が溜まってしまいます。
薬
胸水の原因に応じて、薬を使った治療を行います。
例えば、心不全が原因の場合は、心臓の働きを助ける薬や、体内の余分な水分を排出する薬(利尿薬)を用いて、心臓への負担を軽減します。これにより、胸水が再び溜まりにくくなります。
腫瘍が原因で胸水が溜まる場合は、腫瘍の種類や進行度に応じて、抗がん剤や手術による治療を行います。感染症や炎症が原因の場合は、抗生物質や抗炎症薬を使って炎症を抑え、胸水の発生を防ぐ治療を行うこともあります。
猫の状態や病気の種類によって治療法は異なるため、獣医師と相談しながら進めていきましょう。
外科手術
胸水抜去や薬だけでは十分な改善が見られない場合は、外科手術が必要になることもあります。例えば、膿が溜まる「膿胸」の場合、抗生物質や胸水抜去だけでは治りにくく、何度も再発してしまうことがあります。そのような場合には、胸の中に細いチューブを使って胸水を排出しながら、内部を洗浄する処置が行われることがあります。
また、腫瘍が原因で胸水が溜まる場合は、外科的に腫瘍を取り除く手術が行われます。
猫が胸水の影響で息苦しそうにしていたらどうする?
猫が胸水の影響で呼吸が苦しそうにしているときは、できるだけ負担を減らしてあげましょう。
まずは、猫が楽に呼吸できる姿勢を探してあげましょう。心地よい姿勢は猫によって違いますが、前足を伸ばして座る姿勢(スフィンクスのような姿勢)や、少し高いところに頭を置く姿勢が楽だと感じるようです。
横になるのが辛そうな場合は、クッションやタオルを使って、自然な姿勢でいられるようにサポートしてあげるのもおすすめです。また、段差のある場所を利用して、猫が自分で体勢を調整できる環境を整えてあげるのもおすすめです。
同じ姿勢を長時間続けると、体の一部に負担がかかり、床ずれや別の痛みが出てしまうことがあるので、無理のない範囲で優しく姿勢を変えてあげるようにしましょう。
猫の胸水でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!
この記事では、猫に胸水が溜まる原因や検査方法、改善方法などについてご紹介しました。
胸水が溜まると呼吸が苦しくなるため、異変に気付いたらすぐに動物病院に相談してください。もし現在、猫の胸水でお悩みの方は、大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!