犬の炎症性腸疾患(IBD)とは?原因・改善方法・予防方法などを解説! - 大阪梅田ペットクリニック

コラム

犬の炎症性腸疾患(IBD)とは?原因・改善方法・予防方法などを解説!

犬の腸に炎症が起こる病気のひとつに、炎症性腸疾患(IBD)というものがあります。原因や予防方法ははっきりと解明されていない病気です。この記事では、症状や改善方法などについて詳しくご紹介します。

犬の炎症性腸疾患(IBD)とは?

炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)は、犬の腸に慢性的な炎症が起こる病気です。免疫の異常が関係していると考えられています。一般的な腸炎とは違ってIBDは長期間にわたる下痢や嘔吐などの症状が続き、通常の治療では改善しにくいのが特徴です。

IBDは、腸の粘膜に炎症細胞が集まっていることが確認される病気ですが、その種類にはいくつかのタイプがあります。特に多いのはリンパ球形質細胞性腸炎で、ほかにも好酸球性腸炎、肉芽腫性腸炎、組織球性潰瘍性大腸炎などがあります。症状の現れ方や病気の進行具合は、犬によって異なります。

診断には、ほかの病気の可能性を排除していく除外診断が必要です。ただし、IBDとよく似た病気もあるため、正確な判断が難しいとも言われています。IBDは一度発症すると長く付き合っていく必要がある病気ですが、治療や食事管理によって、症状をコントロールできます。

犬の炎症性腸疾患(IBD)の症状は?

炎症性腸疾患(IBD)の主な症状は、消化器の不調です。最もよく見られるのは軟便や下痢で、一時的に改善してもまた再発することが多く、長期間にわたって続くのが特徴です。嘔吐を伴うこともあり、食べたものをすぐに吐いてしまう場合や、空腹時に黄色い液体(胆汁)を吐くこともあります。一般的な腸炎とは異なり、通常の下痢止めや消化器系の薬では十分な改善が見られないことがよくあります。

また、腸の炎症が続くと、食べたものの栄養をしっかり吸収できなくなり、体重が減少することも。食欲が落ちてご飯をあまり食べなくなったり、なんとなく元気がない、遊ぶ時間が減った、寝ていることが増えたといった変化が見られることもあります。こうした変化は徐々に進むため、「いつもの元気がないな」と気づく頃には、病気が進行している可能性もあるため注意が必要です。

IBDの症状は犬によってさまざまで、持続的に症状が続く場合もあれば、調子が良くなったり悪くなったりを繰り返す場合もあります。特に、季節の変わり目やストレスを感じたときに症状が悪化しやすいとも言われています。軟便や下痢、嘔吐が2〜3週間以上続いたり、普段と様子が違うと感じたら、自己判断せずに獣医師に相談しましょう。

犬の炎症性腸疾患(IBD)の原因は?

炎症性腸疾患(IBD)の原因は、まだはっきりと解明されていません。しかし、遺伝的な要因、食事、腸内細菌のバランス、免疫の異常などが複雑に絡み合って発症するのではないかと考えられています。特定のウイルスや細菌が原因で起こる感染症ではないため、ほかの犬にうつることはありません。

IBDになりやすい犬種として、ジャーマン・シェパードが報告されていますが、どの犬種でも発症する可能性があります。特に、食事の影響を受けやすい犬や、アレルギー体質の犬、消化器系が敏感な犬では発症しやすいと考えられています。腸の炎症が長引くと、消化や栄養吸収に影響を及ぼし、体重が減ったり、元気がなくなることも。

また、免疫機能の異常もIBDの原因のひとつとされています。本来、免疫は体にとって有害な細菌やウイルスを攻撃する働きをしますが、IBDの場合は、腸内の正常な細菌や食べ物に対して過剰に反応し、腸に慢性的な炎症を引き起こしてしまうのです。このため、IBDは自己免疫疾患の一種ではないかとも考えられています。

犬の炎症性腸疾患(IBD)の改善方法は?

犬の炎症性腸疾患(IBD)は、完治が難しい病気ですが、治療を行うことで症状を抑えることができます。主な改善方法として、消化に優しい低脂肪の食事を与える食事療法や、炎症を抑える薬による治療があります。症状の程度や犬の体質によって、方法は異なります。そのため、その子に合ったケアを続けていくことが大切です。ここでは、具体的な改善方法について詳しくご紹介します。

食事療法

IBDの犬には、消化に優しく、腸への負担を減らすために低脂肪の食事を与えることが推奨されています。脂肪分の多い食事は腸の炎症を悪化させる可能性があるため、食事内容には十分に注意が必要です。市販の低脂肪フードには、消化を助ける特別な配合がされているものもあり、体質や症状に合ったフードを選ぶことが大切です。

また、食欲が低下してしまい、十分な栄養を摂れない場合には、リキッドタイプの完全栄養食を用いて強制的に栄養補給を行うこともあります。食事の管理は、IBDの治療において重要な役割となるので、犬の体に合った食事を見つけていきましょう。

IBDの治療には、腸の炎症を抑えるためにステロイドがよく使用されます。治療の初期段階では比較的高い量から始め、症状が落ち着いたら徐々に減薬していきます。長期間の使用は副作用のリスクがあるため、獣医師の指導のもと、適切な量に調整していきましょう。

ステロイドの効果が十分でない場合や、副作用を抑えながら治療を進めたい場合には、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を使用することもあります。また、腸の炎症を抑えるための抗炎症薬であるメサラジンや、腸内の細菌バランスを整えるプロバイオティクス、感染予防のための抗生剤が処方されることもあります。

IBDの治療は長期にわたることが多いため、症状をしっかり管理しながら、犬の体調に合わせたケアを続けていくことが大切です。

犬の炎症性腸疾患(IBD)の予防方法は?

残念ながら、犬の炎症性腸疾患(IBD)を完全に予防する方法は、今のところ見つかっていません。発症の原因がはっきりとわかっていないため、対策を取ることが難しい病気です。

ただ、愛犬の腸の健康を守るために、普段から食事に気をつけることは大切です。低脂肪かつ消化に優しいフードを選び、食べ慣れないものを急に与えないようにしましょう。また、腸内環境を整えるために、運動を行ったりストレスの少ない生活を心がけたりすることも大切です。

もし犬に軟便や下痢が続く、食欲が落ちる、元気がないなどの症状が見られたら、「少し様子を見よう」と思わずに、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。早い段階で正しい対応をすることで、愛犬の負担を少なくすることができます。

犬の炎症性腸疾患(IBD)は完治する?

犬の炎症性腸疾患(IBD)は、残念ながら完治が難しい病気です。一度発症すると、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、生涯にわたって治療や管理が必要になります。

しかし、治療や食事管理を継続的に行うことで一時的に症状を抑えることができるので、愛犬が快適に過ごせるようにすることは可能です。先にご紹介したように、低脂肪の食事を続けたり、腸の炎症を抑える薬を使ったりすることで、多くの犬が元気に暮らしています。

愛犬にとってピッタリな治療法を見つけるためには、食事や薬の調整をしていくことが大切です。長く付き合っていく病気ですが、正しくケアを続ければ、穏やかに過ごせる時間をしっかりと作ることができます。

犬のIBDでお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!

この記事では、犬の炎症性腸疾患(IBD)の症状や原因、改善方法、予防方法などについて詳しくご紹介しました。原因がはっきりわかっていないことから、予防方法として特定の対策があるわけではありません。仮に発症してしまったら完治することも難しいと言われている厄介な病気です。しかし、食事や薬によって、症状を抑えながら快適に過ごす時間を長くすることはできます。もし現在、犬の炎症性腸疾患(IBD)にお悩みの方は、ぜひ大阪梅田ペットクリニックにご相談ください。