犬の緑内障の治療方法は?原因・症状・なりやすい犬種を解説!
気が付かない間に病状が進行したり、失明したりする可能性もある緑内障。人間だけでなく、犬にも発症することのある、目の病気です。中には発症から数時間で失明に至るタイプもあり、失明する前に治療が間に合うかどうかは、飼い主の知識や行動に掛かっています。
この記事では犬の緑内障の治療方法や原因、症状のほか、緑内障になりやすい犬種もご紹介します。ぜひ最後まで読んで、愛犬の目の健康管理に役立ててください。
目次
緑内障とは?
犬の目は、眼房水という水のような液体で満たされています。この眼房水は、毛様体という組織で作られ、隅角という場所から排出されます。通常、生産される量と排出される量は同じでバランスが保たれているのですが、何らかの原因で排出が上手くできなくなると、目の中の眼房水はどんどん増えてしまうのです。すると、目の内側から外側へ向かう圧は強くなります。こうして眼圧が上昇すると、すぐそばを通り目と脳を繋いでいる、視神経が圧迫されて障害・壊死してしまうことも。こうして目にさまざまな症状を引き起こすのが、緑内障と言われる病気です。
緑内障で怖いのは、一度圧迫されて壊死してしまった視神経は、二度と元には戻らないという点。加えて、視神経はとてもデリケートなので、少しの圧迫ですぐに壊死してしまいます。症状が進行する前に早期発見をして、なるべく早く適切な対処をしてあげたいですね。
犬が緑内障になる原因は?
犬の緑内障は、大きく3つの原因に分けられると言われています。
先天性緑内障
先天性緑内障は生まれつきの病気で、胎内期の隅角の発達異常で起こります。人間では3万人に1人程度いると言われていますが、犬で起こることはかなり稀です。
原発性緑内障
緑内障を引き起こすような他の病気が無いにもかかわらず、隅角の問題によって眼圧が上昇するものです。遺伝の要素が強いと言われていて、原発性緑内障になりやすい犬種が存在します。
続発性緑内障
他の病気が原因で、隅角が塞がれて眼防水が排出できず発症するのが続発性緑内障です。犬の緑内障の原因としては最も多く、その数は原発性緑内障の2倍以上と言われています。原因となる病気を、以下に挙げます。
・ぶどう膜炎
ぶどう膜とは目の虹彩・毛様体・脈絡膜のことで、ここに炎症が起こるのがぶどう膜炎です。うまく眼房水を排出できなくなり、眼圧が上がります。
・水晶体脱臼
レンズの役割をする水晶体は、通常は細かい糸状の組織で眼内に固定されています。この固定が外れて、水晶体が前方に倒れると、眼房水の排出口を塞いでしまいます。
・白内障
白内障が進行すると、水晶体が膨らむことで隅角が狭くなり、眼房水が排出しづらくなります。
・腫瘍
目の中に腫瘍ができると、眼房水の出口を塞いだり、炎症を引き起こして眼圧が上昇することがあります。
犬の緑内障の症状は?
犬の緑内障の症状はさまざまですが、主な症状を以下に挙げます。すぐには緑内障を疑えないものもありますが、言葉で不調を飼い主に伝えることはできないので、よく様子を見てあげてください。
目が大きくなる
眼圧が高くなると目が飛び出してきて、大きくなったように見えることがあります。牛眼と呼ばれ、緑内障がある程度進行してから見られることの多い症状です。
白目の部分が充血する
初期症状として、白目の部分が充血してくることがあります。充血の症状が出る眼疾患は、緑内障のほかにも角膜炎や結膜炎、アレルギーなど多くありますが、緑内障の一症状でもある事を覚えておきましょう。
周りのものによくぶつかる
視神経に障害が起きて、失明や視野が狭くなっている場合、周りのものにぶつかりやすくなります。
目が白っぽくなる
急激に眼圧が高まると、角膜浮腫で目の表面が白く濁ってきます。目が白っぽくなる症状は、目の炎症や白内障でも起こると言われています。ちなみに「緑内障」という病名のとおり、目が緑っぽく見える例もあるようです。
涙の量が増える
犬の緑内障は目に痛みを伴います。その結果、涙の量が増えたり、目をショボショボさせることが多くあるようです。
犬の緑内障の治療方法は?
緑内障の治療法は、内科的治療と外科的治療の2種類に分けられます。内科的治療は主に薬剤によって行われ、外科的治療はメスなどの器具で手術を行うもの。目の状態や緑内障の進み具合によって、適切な治療法が選択されます。具体的な治療法について見ていきましょう。
内科的治療
緑内障への内科的治療は、眼圧を下げる・視覚を回復することを目的として行います。
メインとして行うのは点眼治療で、
- 眼房水の生産を抑える薬(炭酸脱水酵素阻害剤、β-受容体遮断薬)
- 眼房水を排出を増やす薬(プロスタグランジン製剤)
の、2種類の作用の薬を投与します。
点眼薬だけでは眼圧が下がらない場合は、高浸透利尿剤の点滴で眼房水の排出を促進することもあります。
外科的治療
外科的治療の目的は、視覚の回復が見込めるかどうかによって二分され、それぞれに治療法も変わってきます。
①急性期で、まだ視覚回復の可能性がある場合
- 前房穿刺
目の中の前房という部分に針を刺して水分を抜き、眼圧を下げます。
- 前房シャント術
特殊なチューブを目の中に設置して、眼防水が排出できるようにします。チューブの詰まりなどにより、再手術が必要になる例も少なくありません。
- 毛様体凝固術
眼房水を生産する毛様体を、レーザーで破壊することで眼房水の量を減らします。短時間で終わる経強膜レーザータイプと、眼球を切開して行う眼内レーザータイプがあり、眼球の状態に合わせて選ばれます。
②既に視覚がなく、痛みの緩和を目的にする場合
- 硝子体内ゲンタマイシン注入術
目の中の硝子体というゼリー状の空間に、抗生物質であるゲンタマイシンを注射します。これにより毛様体が破壊されて眼圧を下げることができるのです。短時間で済み、コストも低い治療法ですが、効果は一定しません。
- 義眼挿入術
目を切開して、毛様体や水晶体などの組織を取り除き、洗浄。そこに義眼となるシリコンボールを入れます。眼球をすべて取り除く訳ではないので、眼球摘出よりも負担が少なく済み、顔つきも大きく変わらないのがメリットです。
- 眼球摘出術
眼球を全て取り除き、まぶたが閉じた状態になるように縫合します。見た目の変化は大きくなってしまいますが、治療の適応範囲が広いので、義眼挿入術ができない場合にも選択されます。
犬の緑内障を放置するとどうなる?
緑内障は一度かかると治ることはなく、基本的には生涯に渡って治療が必要となります。だからといって、治療を途中でやめたり放置してしまうと、視神経や網膜が損傷し、最終的には失明に至る可能性があるのです。眼圧が上昇すると目に痛みも出るので、犬にとっては苦痛が続きますし、食欲や活気が無くなることで衰弱したり、他の病気にかかりやすくなるリスクもあります。
さらに緑内障の中には、急激に眼圧が上昇するタイプのものもあり、この場合は1〜2日放置するだけで失明の可能性があります。愛犬の目に普段と違う様子が見られたら、すぐに病院を受診すると共に、緑内障の可能性を頭に入れておきたいですね。片方の目がすでに緑内障になっている場合は、反対の目も同じように緑内障となる可能性が高いので、注意が必要です。
緑内障になりやすい犬種は?
遺伝的な要素によって、原発性緑内障にかかりやすい犬種を下記に挙げます。
- 柴犬
- シー・ズー
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ビーグル
- ボストン・テリア
特に柴犬は緑内障の発症数が多く、柴犬がかかる眼病のうち、4割が緑内障だと言われています。柴犬の飼い主さんは、特に気をつけておきたい病気ですね。
犬の緑内障でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!
緑内障は失明のリスクもある怖い病気ですが、早期発見・早期治療を行うことで視野や視力の低下を最小限に抑えることができます。目に症状が現れたらすぐに受診することはもちろん、症状が出ていなくても、定期的に眼圧の検査や獣医師の診察を受けることをおすすめします。視覚が保たれるかどうかは、犬にとってのその後のQOLに大きく影響するからです。愛犬との幸せな毎日を守るため、緑内障でお悩みの方はぜひ大阪梅田ペットクリニックにご相談ください。