猫の尿が出ない時のマッサージはNG!正しい対処法と病院へ行くべき症状 - 大阪梅田ペットクリニック

コラム

猫の尿が出ない時のマッサージはNG!正しい対処法と病院へ行くべき症状

愛猫がトイレには行くのに、おしっこが出ていない…。
何度もトイレに行くのに、少量しか出ていなかったり、苦しそうに鳴いていたりする姿を見ると、いてもたってもいられない気持ちになりますよね。

この記事では、猫の尿が出ない時の対処法について詳しくご紹介します。

最初に結論!猫の尿が出ない時に飼い主がすべきこと

愛猫の尿が出ていないことに気づいた時、飼い主さんが不安になってしまうのは当然です。
しかし、そんな時こそ冷静な対応が求められます。
何よりも優先すべきは、一刻も早く獣医師の診察を受けることです。

まず、以下の3つの行動を直ちに行ってください。

  1. すぐに動物病院へ連絡する
    かかりつけの病院が休診の場合は、夜間救急や休日診療に対応している病院を探して必ず連絡を取りましょう。
    電話で状況を伝えることで、病院へ向かうべきか、どのような準備が必要か指示をもらえます。
  2. 猫の状態を観察し、正確に伝える
    獣医師に伝えるため、いつから尿が出ていないか、他に変わった症状はないかなどを詳しく観察・記録しておきましょう。
    (詳しくは次の章「【緊急度チェック】」で解説します)
  3. 自己判断でマッサージやお腹を押すことは絶対にしない
    排尿を促そうとしてお腹を圧迫するのは、膀胱破裂のリスクがあり非常に危険です。
    善意の行動が、愛猫をさらに危険な状態に陥れる可能性があります。

猫の尿が出ない状態は、様子を見て良い状況ではありません。

【緊急度チェック】何時間尿が出ないと危険?病院へ行くべき症状

「少し様子を見ても大丈夫?」「すぐに病院へ行くべき?」と迷う飼い主さんのために、緊急性を判断する具体的な基準を解説します。
愛猫に当てはまる症状がないか、冷静にチェックしてみてください。

12時間以上の無排尿は命に関わる危険サイン

猫の尿が全く出ない状態が 12時間以上 続いている場合、それは極めて危険なサインです。
尿道が完全に塞がってしまう「尿道閉塞」を起こしている可能性が高く、体内に老廃物や毒素が溜まる「尿毒症」や「急性腎不全」を引き起こします。

この状態が24時間を超えると、命に関わる深刻な事態に陥る危険性が非常に高まります。
たとえ猫が普段と変わらず元気に見えても、12時間以上排尿が確認できなければ、様子見は絶対にせず、すぐに動物病院を受診してください。

こんな症状が見られたら夜間・救急でも病院へ

無排尿に加えて、以下のような症状が見られる場合は、さらに緊急性が高い状態です。
一つでも当てはまれば、迷わず夜間や救急の動物病院へ向かいましょう。

  • 何度もトイレに行くが、排尿姿勢をとるだけで尿が出ない
  • 排尿時に苦しそうに鳴いたり、痛がったりする
  • 陰部をしきりに舐める
  • 血尿(おしっこが赤い、ピンク色、茶色い)が出ている
  • 食欲がなく、ぐったりしている
  • 嘔吐を繰り返す
  • お腹(下腹部)が張って硬くなっている
  • 触られるのを嫌がる、攻撃的になる

これらの症状は、猫が強い痛みや不快感を感じている証拠です。
特に下腹部が硬く張っている場合は、膀胱が尿でパンパンに膨れ上がっている可能性があり、一刻を争う事態です。

猫の尿が出ない時のマッサージはNG!自己判断は膀胱破裂のリスクも

尿が出ていない猫に、自己判断でマッサージを行うことは絶対にやめてください。

良かれと思って行ったマッサージが、かえって愛猫の命を危険に晒す可能性があります。
なぜ危険なのか、専門家が行う処置とは何が違うのかを正しく理解しましょう。

なぜマッサージが危険なのか

尿が出ない原因が尿道閉塞の場合、膀胱には行き場を失った尿が大量に溜まり、風船のようにパンパンに膨れ上がっています。
この状態で外から圧力を加えると、非常に薄くなった膀胱の壁が破れてしまう「膀胱破裂」を引き起こす危険があります。

膀胱が破裂すると、尿が腹腔内に漏れ出し、深刻な腹膜炎や敗血症を引き起こし、短時間で死に至る可能性があります。
また、閉塞していない場合でも、不適切な圧迫は膀胱や尿道を傷つけ、症状を悪化させることにつながります。

マッサージ以外に自宅でできる予防策

ここでは、マッサージ以外の、自宅でできる予防法をご紹介します。
このケアは、今後の再発防止につながります。

1. 水分摂取を促す工夫をする

泌尿器系のトラブル予防・改善には、十分な水分を摂り、尿の濃度を薄くして排泄を促すことが非常に重要です。
脱水は尿路結石のリスクを高めるため、積極的に水分補給をさせましょう。

  • ウェットフードを与える:ドライフードに比べて水分含有量が多いため、食事から自然に水分を摂取できます。
  • ドライフードをぬるま湯でふやかす:フードの香りが立ち、食欲を刺激する効果も期待できます。
  • 新鮮な水をいつでも飲めるようにする:家の複数箇所に水飲み場を設置し、常に清潔な水を用意しましょう。
  • 猫用スープやチュール:おやつとして与えることで、手軽に水分補給ができます。

1日に必要な水分摂取量の目安は、体重1kgあたり約50mlです。
愛猫がどれくらい水を飲んでいるか、チェックしてみましょう。

2. トイレ環境を見直す

猫は非常にきれい好きな動物であり、トイレが汚れていたり、場所が気に入らなかったりすると、排尿を我慢してしまうことがあります。
これが膀胱炎などの引き金になることも少なくありません。

  • トイレは常に清潔に保つ:排泄物はすぐに片付け、こまめに猫砂を全交換しましょう。
  • 静かで安心できる場所に設置する:人の出入りが激しい場所や、大きな物音がする場所は避けましょう。
  • トイレの数を増やす:理想は「猫の頭数+1個」です。いつでもきれいなトイレを使えるようにしてあげましょう。
  • 猫砂の種類を変えてみる:猫によっては砂の粒の大きさや素材に好みがあります。複数の種類を試してみるのも良いでしょう。

3. ストレスの原因を取り除く

ストレスは、特に「特発性膀胱炎(FIC)」の大きな原因となります。
猫は環境の変化に敏感な動物なので、飼い主が気づかないような些細なことがストレスになっている可能性があります。

  • 安心できる隠れ家を用意する:段ボール箱やキャットタワーの個室など、猫が一人で静かに過ごせる場所を確保しましょう。
  • 生活環境の変化を避ける:引っ越し、模様替え、新しいペットや家族が増えるなどの変化は、猫にとって大きなストレスです。
  • 優しく声をかけ、スキンシップをとる:飼い主との穏やかな時間は、猫の安心感につながります。
  • 猫用フェロモン剤を使用する:フェリウェイなど、猫をリラックスさせる効果のある製品を活用するのも一つの方法です。

4. 体を冷やさないように保温する

体が冷えると血行が悪くなり、免疫力の低下や泌尿器系の不調につながることがあります。
特に、体温調節機能が低下している高齢の猫や、体調を崩している猫は保温を心がけましょう。

室温を猫が快適に過ごせる22~26℃程度に保ち、ペット用のヒーターや暖かい毛布を用意してあげるのがおすすめです。
ただし、低温やけどには十分注意してください。

5. 食事内容を見直す(獣医師の指示のもと)

尿路結石症などの場合、食事療法がメインの治療法となります。
しかし、自己判断で療法食に切り替えるのは絶対にやめてください。

結石の種類によって、適した食事内容は全く異なります。
間違った療法食を与えると、かえって症状を悪化させる危険性があります。
必ず動物病院で正確な診断を受け、獣医師の指示に従った療法食を与えるようにしましょう。

そもそもなぜ?猫の尿が出なくなる主な原因

猫の尿が出なくなる背景には、いくつかの病気が隠れていることがほとんどです。
代表的な原因を知ることで、今後の再発防止にもつながります。

【特にオス猫は注意】尿道閉塞

猫の排尿トラブルで最も緊急性が高く、命に直結するのが「尿道閉塞」です。
これは、尿の通り道である尿道が、結石や膀胱から剥がれ落ちた細胞の塊、炎症による腫れなどによって物理的に塞がれてしまう状態を指します。

尿道が塞がると尿を全く排泄できなくなり、急性腎不全や尿毒症を引き起こし、発見が遅れると死に至る非常に危険な病気です。
特にオス猫は、尿道がメスに比べて細く長いため、閉塞を起こしやすい傾向にあります。

膀胱炎(細菌性・特発性)

頻尿や血尿、排尿痛などの症状を引き起こすのが「膀胱炎」です。
膀胱炎には大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 細菌性膀胱炎:尿道から細菌が侵入し、膀胱で増殖することで起こります。高齢の猫や、糖尿病などの持病がある猫に比較的多く見られます。
  • 特発性膀胱炎(FIC):細菌感染などの明確な原因がないにもかかわらず、膀胱に炎症が起こる病気です。ストレスが大きな引き金になると考えられており、若い猫に多く、再発しやすい特徴があります。

尿路結石症(ストルバイト・シュウ酸カルシウム)

尿の中に含まれるミネラル成分が結晶化し、それが集まって石(結石)のようになったものが「尿路結石」です。
この結石が膀胱や尿道を傷つけて炎症を起こしたり、尿道を塞いで尿道閉塞の原因になったりします。

猫の尿が出なくてお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!

この記事では、猫の尿が出ない時の対処法について詳しくご紹介しました。

最も重要なことは、自己判断でマッサージなどの応急処置をせず、一刻も早く動物病院を受診することです。
猫の排尿トラブルは、数時間の遅れが愛猫の命を左右することもあります。

もし現在、猫の尿が出なくてお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください。猫ちゃんの健康を一緒に守りましょう。