犬が「リンパ腫じゃなかった」時、似ている病気と今後のための対策を解説!
ワンちゃんにリンパ腫の疑いがあったものの「今回はリンパ腫ではなかった」という診断に、ひとまず胸を撫で下ろされたことでしょう。
しかし、その安堵と同時に、実際はなんだったのかと新たな不安があるでしょう。
リンパ腫に似た症状はいくつかあるので、注意してくださいね。早めにケアをすることで改善が期待できるので、気になる場合は動物病院に相談しましょう。
この記事は、犬のリンパ腫の種類や考えられる病気、今後の過ごし方などについて詳しくご紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
犬のリンパ腫の種類は?
今回「疑い」と診断されたリンパ腫について、まずはどのような病気なのかを知っておくことが大切です。
リンパ腫は、血液のがんの一種で、体の免疫を司るリンパ球ががん化する病気です。
発生する場所によって、主に以下の5つのタイプに分類されます。
目次
多中心型
犬のリンパ腫で最も多く見られるタイプで、全体の約80%を占めます。
顎の下や脇の下、足の付け根など、体表にあるリンパ節が腫れるのが特徴です。
飼い主様が「しこり」として気づきやすい初期症状が現れます。
皮膚型
皮膚に赤い発疹やしこり、かさぶたなどができるタイプです。
アレルギー性皮膚炎など、他の皮膚病と症状が似ているため、診断が難しい場合があります。
症状は口内や歯茎に現れることもあります。
消化器型
胃や腸などの消化管に発生するタイプで、犬のリンパ腫の中では2番目に多いとされています。
主な症状として、食欲不振や嘔吐、下痢、体重減少などが見られます。
他の消化器疾患との見極めが重要になります。
縦隔型
胸の中(縦隔)にあるリンパ節や胸腺が腫れるタイプです。
腫瘍が気管や食道を圧迫するため、咳が出たり、呼吸が苦しそうになったりする症状が見られます。
比較的まれなタイプとされています。
節外型
上記の4つのタイプに当てはまらない、特定の臓器に発生するリンパ腫です。
例えば、腎臓、眼、中枢神経系(脳や脊髄)などに発生することがあります。
発生した場所によって、さまざまな症状が現れます。
もしかしてこの病気かも?犬のリンパ腫と間違えやすい病気
「リンパ腫じゃなかった」という診断は、本当に喜ばしいことです。
しかし、症状が実際に現れている以上、その原因を正しく理解することが大切です。
ここでは、リンパ腫と症状が似ていて間違えやすい病気を、症状別にご紹介します。
【首・あごのしこり】リンパ節の腫れで疑われる病気
多くの飼い主さんが最も不安に感じる「しこり」や「リンパ節の腫れ」。
これらはリンパ腫の典型的な症状とされますが、実際には他の原因で起こることの方がはるかに多いのです。
- 反応性リンパ節炎(反応性リンパ球過形成)
これは、リンパ腫と最も間違えやすい状態の一つです。
歯周病や外耳炎、皮膚炎など、体のどこかで起きた炎症や感染に対して、近くのリンパ節が免疫反応を起こして腫れている状態を指します。
がん細胞が増殖しているわけではないため、原因となっている炎症が治まれば、腫れも自然と引いていきます。 - 唾液腺嚢胞
顎の下や首のあたりに、ぷよぷよとした柔らかいしこりができる病気です。
唾液を溜める袋(唾液腺)や管が破れて唾液が漏れ出し、袋状に溜まってしまうことで発生します。
痛みはほとんどなく、急に大きくなることもあります。
【嘔吐・下痢など】消化器症状で疑われる病気
消化器型のリンパ腫は、食欲不振や嘔吐、下痢といった症状を引き起こします。
これらは非常に多くの病気で見られる症状のため、慎重な診断が必要です。
- 炎症性腸疾患(IBD)
腸に慢性的な炎症が起こり、嘔吐や下痢を繰り返す病気です。
症状が消化器型リンパ腫と非常によく似ており、確定診断のためには内視鏡検査で組織を採取する必要があります。 - 慢性膵炎
膵臓の炎症が長く続く病気で、食欲不振や嘔吐、腹痛などの症状が見られます。
症状が出たり治まったりを繰り返すことが多いのが特徴です。 - 食物アレルギーや消化管内異物
特定の食べ物に対するアレルギー反応や、おもちゃなどの異物を飲み込んでしまった場合も、嘔吐や下痢の原因となります。
【咳・呼吸困難など】胸の症状で疑われる病気
胸の中に発生する縦隔型リンパ腫は、咳や呼吸困難といった症状を引き起こすことがあります。
特にシニア犬では、他の病気の可能性も考えられます。
- 心臓病
特に高齢の小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症などでは、血液の逆流によって肺に水が溜まり(肺水腫)、咳や呼吸困難を引き起こします。 - 気管虚脱
呼吸の際に気管が潰れてしまい、ガーガーというアヒルの鳴き声のような特徴的な咳が出る病気です。 - 肺炎
ウイルスや細菌の感染によって肺に炎症が起こり、咳や発熱、呼吸困難などの症状が見られます。
【皮膚のできもの】で疑われる病気
皮膚にできるしこりや発疹は、皮膚型リンパ腫を疑うきっかけになります。
しかし、犬の皮膚にはさまざまな「できもの」が発生します。
- 組織球腫
若い犬(通常3歳未満)によく見られる良性の腫瘍です。
赤くドーム状に盛り上がり、数ヶ月で自然に消えることも多いのが特徴です。 - 肥満細胞腫
皮膚にできる悪性腫瘍の中では最も発生率が高いものです。
見た目や大きさはさまざまで、「悪性度の低いもの」から「転移しやすい悪性のもの」まで多様なため、細胞の検査が不可欠です。 - 膿皮症
細菌感染によって皮膚に膿が溜まり、発疹や脱毛、かゆみなどを引き起こす病気です。
「リンパ腫じゃなかった」診断後の正しい過ごし方
診断結果に安堵した今だからこそ、今後の愛犬の健康のためにできることがあります。
「様子を見てください」という獣医師の言葉を、具体的な行動に移しましょう。
今後のための「経過観察」と「記録」の付け方
「経過観察」とは、ただ何となく様子を見ることではありません。
愛犬の変化にいち早く気づき、次の診察で獣医師に正確な情報を伝えるための、大切な健康管理です。
| 記録する項目 | 記録のポイント |
| しこりの状態 | 大きさ(定規やノギスで測る)、硬さ、色、熱っぽさ。毎週同じ曜日に写真を撮ると変化が分かりやすいです。 |
| 体重 | 週に1回、同じ時間に測定します。体重の増減は健康の重要なバロメーターです。 |
| 食欲・飲水量 | 完食したか、残したか。水を飲む量に変化はないかなどを記録します。 |
| 元気・様子 | 散歩の時の歩き方、遊ぶ時間、寝ている時間の長さなど、普段との違いをメモします。 |
| 排泄の状態 | 便の硬さや色、回数。尿の色や量、回数などを記録します。 |
これらの記録は、万が一体調に変化があった際に、獣医師が診断を下すための非常に貴重な情報源となります。
犬のリンパ腫でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!
この記事は、犬のリンパ腫の種類や考えられる病気、今後の過ごし方などについて詳しくご紹介しました。
大切なのは、今回の診断結果に安堵するだけでなく、正しい知識を持って冷静に愛犬の健康を見守り続けることです。
もし現在、犬のリンパ腫でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください。一緒にワンちゃんの健康を守っていきましょう。些細なことでも、お気軽にご相談くださいね。