ウォブラー症候群とは?原因・症状・治療方法・予後について解説!
ワンちゃんの足元がおぼつかなかったりふらついたりしているような症状がみられた時、ウォブラー症候群という神経の病気が疑われることがあります。特に大型犬に多く見られるこの病気は、早期に気づいてあげることがとても大切です。この記事では、ウォブラー症候群の原因や症状、治療法、予後などについて詳しく解説していきます。
目次
ウォブラー症候群とは?
ウォブラー症候群とは、犬の首(頸椎)にある脊髄が圧迫されることで、痛みやふらつき、足の動かしづらさなどの症状を引き起こす神経の病気です。正式には「後部頚髄狭窄症(Caudal cervical stenotic myelopathy)」とも呼ばれます。この症候群は、特にドーベルマンやグレートデンといった大型から超大型の犬種で多くみられます。
ウォブラー症候群には主に2つのタイプがあります。
ひとつは、成長期の大型犬で起こる脊椎の形成異常によって、首から胸にかけての脊髄が圧迫されるものです。
もうひとつは、中高齢のドーベルマンなどで見られる慢性的な頸椎の不安定さが原因で、骨以外の靭帯や関節まわりの組織が肥厚し、脊髄を圧迫してしまうタイプです。
特に成長期の大型犬では、85%以上の確率で複数の部位に異常が出るとの報告があります。同じ「ウォブラー症候群」と呼ばれてはいますが、発症の時期や原因は大きく異なるため、見た目の症状が似ていても、治療方針はそれぞれのタイプに応じて慎重に選ぶ必要があります。
小型犬でも発症する?
ウォブラー症候群は、大型犬に多い病気といわれています。ご紹介したように、特に中高齢のドーベルマンや、若いグレートデン、ワイマラナー、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどが代表的な発症犬種です。
しかし、近年の臨床現場では、小型犬であっても似たような症状や病態が見られるケースが報告されています。例えば、チワワやヨークシャー・テリアといった小さな犬種でも、脊髄の圧迫によるふらつきや歩行障害が確認された例があります。
ただし、小型犬においてはウォブラー症候群という診断名がつくことはまれであり、症状や画像所見が類似していても、原因が異なる可能性もあるため、慎重に診断していくことが求められます。少しでも歩き方がおかしい、ふらついていると感じたら、早めに受診してください。
ウォブラー症候群の原因は?
ウォブラー症候群のはっきりとした原因は、現在のところまだ解明されていません。ただし、発症しやすい犬種が限られていることから、遺伝的な要因が関係している可能性があると考えられています。とはいえ、特定の遺伝子に異常が見つかっているわけではなく、あくまで傾向としての推察にとどまっています。
この病気では、首の骨(頸椎)やその周囲の構造に異常が生じ、脊髄が圧迫されてしまいます。具体的には、後部の頸椎が不安定になって脊髄の通り道が狭くなったり、靭帯や椎間板といった組織が厚くなったりすることで、脊髄に持続的な圧力がかかるようになります。
その結果、ふらつきや歩行困難、痛みなどの神経症状が現れるのです。なお、症状の出方や程度、進行のスピードには個体差があり、なかには、気づいたときにはかなり進行していることもあります。早期の診断とケアがとても大切な病気です。
ウォブラー症候群でよくある症状は?
ウォブラー症候群は、首の神経が圧迫されることで、少しずつさまざまな症状が現れてくる病気です。初期によくみられるのは、後ろ足のふらつきや踏ん張りの弱さ、開脚してしまうような動きです。何となく歩き方がぎこちない、階段をうまく上れないといった変化に、飼い主さんが最初に気づくこともあります。
特徴的なのは、「two engine gait(ツーエンジンゲート)」と呼ばれる歩き方です。これは、前足は小さな歩幅でスムーズに動いているのに対し、後ろ足は大きくバタバタと動いてふらつく、というものです。前足と後ろ足の動きがバラバラになり、不安定に見えるのが特徴といわれています。
ほかにも、首を下げたままにしている様子や、抱っこや散歩のときに嫌がるような仕草があれば、首の痛みを感じている可能性があります。進行すると四肢すべてに力が入りづらくなってしまうため、気になる症状があれば早めに獣医師へ相談することが大切です。
ウォブラー症候群の治療方法は?
ウォブラー症候群の治療は、症状の程度や犬の体格によって異なります。
軽度の場合は、消炎鎮痛剤を使って痛みを和らげたり、運動を制限して安静に過ごさせたりすることで、症状を抑える対症療法が行われることもあります。しかし、このような方法は一時的なもので、根本的な解決と言えない場合があります。
根本的な改善を目指す場合は、やはり手術が必要です。代表的なのは、腹側減圧術という方法で、首の前側から頸椎にアクセスし、脊髄を圧迫している部分に穴をあけて圧力を減らします。また、背中側からアプローチする背側椎弓切除術では、椎骨の一部を取り除いて神経への圧迫を軽くします。
さらに、不安定になっている骨の動きを抑える椎体固定術も手術の選択肢として考えられます。こちらは骨セメントや金属のスクリュー、プレートなどを使って頸椎をしっかり固定する手術法です。治療方法は犬の状態に応じて選んでいくため、獣医師とよく相談して決めていきましょう。
ウォブラー症候群の予後は?
ウォブラー症候群の予後は、症状の重さや病変の場所、治療方法によって大きく変わりますが、長い時間をかけて悪化してきたケースや、歩くことができないほど神経のダメージが強い場合、また脊髄の複数箇所が圧迫されている場合(特に胸のあたりまで広がっている時)は、治療後の回復が難しいこともあります。
手術を行うかどうか、どの方法を選ぶかについては、獣医師の経験や考え方、ご家族の希望なども含めて決めていくことが一般的です。現時点では、「これがベスト」と言い切れる手術法が確立されているわけではなく、それぞれにメリットとリスクがあり、予後についても期待できない場合があることも現実です。
また、手術後に一時的に症状が悪化することも少なくなく、報告によると約70%のケースで術後に一時的な歩行の困難がみられています。特に大型犬の介護は体力的にも大変なため、術後のサポート体制についても十分に話し合っておくことが大切です。長い目で見たケアが、回復のためには必要といえます。
ウォブラー症候群でお悩みの方は大阪梅田ペットクリニックにご相談ください!
この記事では、ウォブラー症候群の原因や症状、治療法、予後などについて詳しくご紹介しました。
ウォブラー症候群は、主に大型犬に多く見られる首の神経の病気で、ふらつきや歩行の異常といった症状が現れます。原因は現時点でははっきりとは分かっていませんが、早期の発見と適切な治療が回復のためには必要な病気です。治療法には内科的なケアから手術までさまざまな選択肢がありますが、どの方法にもメリットと注意点があるため、獣医師としっかり相談しながら進めていくようにしましょう。術後のケアや生活環境の見直しも含めて、家族みんなで支えていくことが、ワンちゃんの健やかな毎日につながります。もし現在、ウォブラー症候群や関連した症状にお悩みの方は、大阪梅田ペットクリニックにご相談ください。原因を解明して治療していくことで、症状が和らいだり改善したりする可能性があります。早期発見によって悪化することが防げるので、症状が軽い場合でも、なんでもご相談ください。